渋谷すばると正しい街

人生には、三つの坂があるんですって。上り坂、下り坂、まさか。絶対なんてないんです。人生ってまさかなことが起きるし、起きたことはもう元に戻らないんです。レモンかけちゃった唐揚げみたいに。

ドラマ『カルテット』より








感情の整理と備忘録。



2018年4月15日 午前9時35分

ファンクラブ会員限定の伝言板より、「ファンの皆さまへお知らせ」というメールが届いた。関ジャニ∞メンバーから大切なお知らせがあります、と。午前11時にサイトをご覧ください、と。

ここで、ようやく、だった。

私は「渋谷すばる脱退」という記事を知ったとき、1ミリも信じることがなかった。ファンクラブからメールが送られてくる前日には、ネットニュースで「渋谷すばるが緊急会見」という情報も出ていたがそれについても同様に、なんの疑いもなくガセだと思っていた。

メールが届いてから11時までの約1時間半はとても果てしなく、長い長い時間だった。

そして、11時を1分過ぎた頃だった。回線が混み合うのを考慮して、すでにまだ真っ白のままであるそのページを開いていた為、時間が丁度になってから数回リロードを繰り返した程度ですぐに見ることができた。

ジャニーズ事務所を退所させていただくことになりました」

真っ先に目に飛び込んできたのはこの文字だった。

渋谷すばるから始まり横山裕(侯隆)で終わるメンバーの文章。やたらと長いスクロールバー。全然読めなかった。指を動かしはするが、文字を理解して読み進めていくことはできなかった。

ただ、この時点で言及してくれていた村上くんの、ツアー初日から6人、という文字だけはハッキリと目についた。その瞬間、スマホを投げて笑えるほど泣きじゃくった。

この時の自分を側から見ると、きっとドラマや映画でよく目にする、警察で遺体確認直後に床に崩れ落ちる親族や友人恋人のそれそのものだったと思う。

まあ、彼は死んだわけじゃないからこんな例えはどうかと思うのだけれど、でも退所すると知った直後は死んだんだと思った。6人という文字で完全に心が突き落とされてしまった。

これはヲタクにありがちな表現だと思うのだが、もう「見れない」ではなく、もう「会えない」という気持ちで全身が埋め尽くされてしまったのだ。肉体的なことではなく、アイドルとファンの関係性の中で、彼は死んだのだと思ったのだ。

とっても自己的。6人のことではなくまず自分の気持ちだった。

昼に行われた記者会見は3日ほど経ってから、全てを通しで観ることができた。



なんでなんで?→悲しいよ寂しいよ嫌だよ→は?ふざっけんなよ→ああそうかこれは夢か→なんでなんで?

大袈裟にいうと、会見から約1週間ほどは、この感情1つ1つの流れを1日ごとではなく毎分毎秒刻みで繰り返すことになった。そりゃお尻に変なできもんも出来る。ありがとう、テラマイシン(塗り薬)(良い薬です)。


だけど。でも。やっぱり。


もう断言してもいいのではと思うほど、ファンの誰もが想像していなかった関ジャニ∞渋谷すばるジャニーズ事務所退所。

彼の頭の中に、関ジャニ∞から去るという選択肢が浮かんだことへの驚きと、そしてその選択を取ったことへの驚き。

すばるくんは
"ヨコとヒナがいないと生きていけないんじゃないの?"

いわゆる「担当」という位置に居ない人だったからこそ余計にかもしれない。関ジャニ∞を好きになってから今回の件を知るまで、彼だけを注目して見ることがなかった私には、このフィルターはとんでもなく分厚くて頑丈なモノだった。




36歳。

そっか、すばるくんはもう36歳だったんだ。

残りの人生を半分と考え、一人の人間として自分の未来を想像する。



 いろんなもの
 見てきた

 見えなかったもの
 見えてたもの
 見えてきたもの

 世界はすばらしい

 これからも もっと
 見たいんだ


 自分の声や
 色んなひょうげんが
 どこまでとどくのか
 一生でためしたい
 どこまでいけるかな


昨日、ソロツアーで販売していた彼の絵本を当時ぶりに読んだ。

どうにか彼の決断を応援できる気持ちに持っていきたくて、この絵本を含めてここ数日、これまで全くと言っていいほど読んでこなかった彼のインタビュー記事を探しては引っ張り出してきて読み漁っていた。

俺は興味のないことはやらずにきた。
音楽を好きになる前は色々やった。
やりたくないことは無駄だし
自分の好きなことをやればいい。
その方が未来の自分は後悔しない。

嘘をつかない。人にも自分にも。
嘘をつくのが難しいとかいう以前に、自分に嘘つけないから。根っこは全部ここ。『あきらめない』とか『曲げない』とかも全部そこやもん。
けどあえて言うなら、曲げない、かな。というか曲げられないんやけどね。

自分の伝えたかったことが届き始めている気がする。音楽を純粋に届けるフェスのような場はよりわかりやすいかもしれない。
でも俺は相手や場所関係なくずっと同じ思いで同じ言葉で伝え続けてきたつもり。
10周年。やっとスタートラインに立てたと感じたあのときに目指していた場所はもう超えられたと思っている。

『生きろ』は少し前の俺
『Answer』は今の俺が反映されているんじゃないかな


つい最近の言葉から昔の言葉まで、とにかく手元にあるものは沢山読んだ。最後に読んだのが絵本だった。読めば読むほど、形容することのできない、どうしようもない、たまらない気持ちになった。


渋やんを見ていて、"シンプル・イズ・ベスト"がいかに大切かってことに気づかされた気がする。
渋やんは自分を削ってでも
どんなに傷ついても
大事なところは絶対守ってるから。
自分の中の聖地があって、その部分の純粋さを歌とか、言葉とかにのっけて表現してる。だからビリビリ伝わるものがあるねん。俺は、つい武装したり、傷つかないようにイヤなことは跳ね除けがちやから。


これは私の好きな人が話していた言葉だ。

『シンプル・イズ・ベスト』

本当にこの言葉通りの人だったなと
私はそこに改めて気づかされた気がする。

小ちゃくて大っきな少年で初老。(日本語)

渋谷すばるの人生は、どこを切り取っても音楽であったし、音楽のために海外に行くのだから結果としてこの先の人生も音楽である。


音が好き 歌が好き


彼の中にはきっとそれ以上も以下もなく、自分の感情に誰よりも真っ直ぐなだけ。

本当にどこまでもいってもブレなかった一貫性。

カッコイイを通り越してもはや腹立たしいくらいだけれど、私は結局、彼のそういう部分が好きだったし大好きだった。




冒頭でも引用したが、カルテットに出てくる台詞の数々が現在の状況に重なりすぎていて辛い。たまたま見返していたのがこのタイミング。ある種の運命的なものを感じてもいるが、こんな運命はもちろん望んでなどいなかった。

夫婦って別れられる家族なんだと思います

この人にはわたしがいないと駄目っていうのは、大抵この人がないとわたし駄目、なんですよね

いなくなるのって消えることじゃないですよ。いなくなるのって、いないってことがずっと続くことです。いなくなる前よりずっと傍にいるんです。


これらは全て主人公の台詞だ。
ある日突然、夫が失踪してしまった主人公が語る台詞だ。


夫婦を関ジャニ∞に置き換えてしまう。

遡って三馬鹿の関係性を考えたとき、横山くんと村上くんならもしかすると、一度はそんなことを頭に浮かべたことがあるかもしれないと想像した。そしてそうであったのなら、最終的に二人のたどり着く先は「大抵」なのだろうと思うとやるせない。

最後に載せた台詞は、大倉くんもラジオで似たようなニュアンスのことを話していたが、彼ら6人にも、そしてこれからも応援していくファンにとってもあてはまる台詞だろうと思う。


いないってことがずっと続く。

それは一体どれほど痛みや苦しさや虚無感なのだろうか。





とまあ、ここまで感情の赴くまま支離滅裂にひたすら書いたところで、最後にこのブログ記事タイトルにした「渋谷すばると正しい街」についても触れておく。

ここで指している正しい街というのは1999年に発売された椎名林檎の1作目のアルバム、無罪モラトリアムの中に収録されている曲のことである。シングルではないけれど、まあむちゃくちゃ有名な曲なので知っている人は沢山いるだろう。

椎名林檎がデビュー直前、福岡で交際していた当時の恋人へ上京するために別れを告げた際のやりとりと心情を綴った曲。

私は彼女の曲をよく好んで聴いているけれど、ファンや!というほどのレベルではない為、ここに書いた以上のことは(裏エピソードなど他にあるのだとすれば)知らない。なので、これをこのまま鵜呑みにして進めていく。


詞の最初と最後に出てくるこの言葉


 あの日飛び出した
 此の街と君が正しかったのにね

別れた恋人がきっかけで作られた曲、という点だけ考えればこの詞は、その彼が正しく、夢を追って街を出た彼女が間違っていたことになるのだけど、でも、だ。結果として椎名林檎は成功している。今もなお第一線で活躍しているアーティストである。

……こんなカッコイイことあれへんがな。

夢破れていない彼女が歌う。そりゃあこの詞の通りに思ってしまう日もきっとあっただろう。でも結果。全ては結果だ。

‪勝手に飛び出して行くすばるくんに対しても、私はいつかそんな風に思えたらと願ってみたりする。

彼の場合は、会見での言葉を聞く限り「音楽の追求」という理由で出ていくので、決して明確な成功を求めて事務所を辞めるわけではないのだろうけど、引退ではなく表現は続けていくと、何かしらの形で発表する機会があればと明言した以上、また再び彼の作る何かに触れられるときを、そしてその願いを抱いてしまう。


絶対に思ってほしくない。あのまま関ジャニ∞に居たことが正しくて、これまで築き上げてきた全てを手放して出て行った自分が間違っていたんだと、絶対に絶対に思ってほしくない。


何様だよ。


私が誰よりも私に突っ込んでいる。でも、ただのファン。渋谷すばるは友達でもなく知り合いでもなく、こちらの存在すら知らない遠い人。気持ちをぶつけることなど、引き止めることなど到底出来ないところにいた無力な一人のファン。

どう思おうが勝手だとここは開き直る。




もう5月、まだ5月。

この感情はずっと抱えたままでいいんだと言ってくれる人がいて良かった。きっとあなたがそうだったように、私にも次のステージへ向かう時間がまだまだ必要だ。

大丈夫かな。大丈夫だよ。応援したいと思える気持ちがもう応援してることと一緒だもん。

あーあ。くっそやろう。

だいすき、すばるくん。

スバラジのジングル、めっちゃええやん。
私もCD化してくれたら絶対買うで。

知らんけど。